強制執行(給与差押え)のやり方と2026年法改正

最終更新: 2026-07-24|養育費請求ナビ編集チーム
強制執行(給与差押え)のやり方と2026年法改正のイメージ
「差押え」は養育費回収の最終兵器。2026年の法改正で「逃げ得」が許されなくなった仕組みを解説します。

養育費の強制執行は特別に優遇されている

強制執行とは、裁判所を通じて相手の財産(給与・預貯金・不動産など)を差し押さえ、強制的に回収する手続きです。養育費はお子さまの生活を支える特別な債権であるため、一般の借金などと比べて優遇されています。

第一に、差押え範囲です。通常の債権は給与(手取り)の4分の1までしか差し押さえられませんが、養育費は2分の1まで可能です。第二に、将来分の差押えです。一度申し立てれば、未払い分だけでなく将来の養育費についても毎月の給与から継続的に回収できます。相手が会社員なら、勤務先が変わらない限り安定した回収が続きます。

強制執行に必要なもの:債務名義

強制執行には「債務名義」(強制執行認諾文言付き公正証書、調停調書、審判書、判決など)が必要です。加えて、執行文の付与や送達証明などの手続きを経て、相手の財産を特定して地方裁判所に申し立てます。

「公正証書がないから差押えできない」「相手の勤務先が分からない」と諦める必要はありません。次に説明する2026年4月施行の法改正で、状況は大きく変わりました。

2026年4月施行の改正民法:養育費回収の4つの新制度

2026年(令和8年)4月1日に施行された改正民法・民事執行法等(令和6年法律第33号)は、養育費の回収実務を根本から変えました。柱は4つあります。

1つ目は先取特権の付与です。養育費債権が他の借金より優先して回収できる「一般の先取特権」として認められました。これにより、強制執行認諾文言付き公正証書や判決といった債務名義がなくても、取り決めの存在を証明する文書(私文書の合意書等)があれば、担保権の実行として差押えを申し立てられる可能性が開かれました。優先的に回収できる範囲は子ども1人あたり月額8万円までです(法務省令で規定)。

2つ目は法定養育費制度の新設です。養育費の取り決めをせずに協議離婚した場合でも、離婚の日から子ども1人あたり月額2万円を請求できるようになりました(2026年4月1日以降の離婚に適用)。ただしこれは最低保障であり、算定表に基づく適正額(多くの場合月4〜6万円以上)より低いため、適正額の取り決めは引き続き重要です。

3つ目は執行手続のワンストップ化です。従来は財産開示手続→第三者からの情報取得手続→差押命令と別々の申立てが必要で、その間に相手が転職すると振り出しに戻ることもありました。改正後は1回の申立てで、財産調査(市町村・年金事務所への勤務先照会等)から差押えまで連続して進められます。

4つ目は情報開示命令の新設です。養育費の調停・審判で、裁判所が当事者に収入・資産情報の開示を直接命じることができるようになり、正当な理由なく開示しない場合や虚偽開示には10万円以下の過料が科されます。従来からある財産開示手続の刑事罰(不出頭・虚偽陳述に6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金)とあわせて、財産隠しはますます困難になっています。

新制度内容注意点
先取特権債務名義がなくても合意書等で差押え申立てが可能に優先枠は子1人月8万円まで。施行日以降発生分が対象
法定養育費取り決めなしでも子1人月2万円を請求可能2026年4月1日以降の離婚に適用
ワンストップ執行財産調査から差押えまで1回の申立てで完結申立ては必要(自動で回収されるわけではない)
情報開示命令裁判所が当事者に収入・資産の開示を命令不開示・虚偽開示は10万円以下の過料

2026年4月より前に離婚した場合はどうなる?

法定養育費(月2万円)は2026年4月1日以降に離婚した場合に適用されるため、施行前に離婚した方には発生しません。一方、先取特権は、施行前の離婚でも施行日以降に発生する養育費(将来分)については活用できる可能性があります。すでに合意書があるのに不払いが続いているケースでは、新制度による差押えが現実的な選択肢になります。

また、執行手続のワンストップ化や情報開示命令は離婚時期を問わず、施行後に申し立てる手続きで利用できます。ご自身のケースでどの制度が使えるかの判断は専門的になるため、弁護士の無料相談で確認するのが確実です。

強制執行は弁護士に任せるのが確実

強制執行や情報取得手続は、必要書類が多く、要件の確認や財産の特定など専門的な判断が求められます。書類の不備で申立てが却下されると時間を失い、その間に相手が財産を移してしまうリスクもあります。

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※本記事は一般的な法制度の解説であり、個別のケースへの法的助言ではありません。具体的な判断は必ず弁護士にご相談ください。