財産開示手続とは?相手の財産を調べて養育費を回収する方法

財産開示手続とは:裁判所が相手に財産を「言わせる」制度
財産開示手続とは、債務者(養育費を払わない相手)を裁判所に呼び出し、自分の財産の内容を陳述させる制度です(民事執行法196条以下)。差押えをするには「相手のどの財産を差し押さえるか」を債権者側が特定する必要がありますが、別居・離婚後に相手の勤務先や預金口座を正確に把握し続けるのは困難です。この「財産が分からない」という壁を突破するために用意されているのが財産開示手続です。
手続きが実施されると、相手は財産目録を裁判所に提出したうえで、財産開示期日に出頭して財産状況を陳述しなければなりません。申立人は裁判所の許可を得て、開示義務者に直接質問することもできます。
注意したいのは、財産開示はあくまで「調べる」手続きであり、開示された財産に自動的に差押えの効力が及ぶわけではないことです。開示によって判明した給与や預金に対しては、別途強制執行(差押え)の申立てを行って回収します。
申立てができる人と要件
財産開示手続を申し立てられるのは、原則として「執行力のある債務名義」を持っている債権者です。債務名義には、調停調書・審判書・確定判決・仮執行宣言付支払督促・強制執行認諾文言付き公正証書などが含まれます。2020年の民事執行法改正で、公正証書(執行証書)しか持っていない方も申立てができるようになりました。
また、申立てには「知れている財産に対して強制執行をしても完全な弁済を得られないこと」などの要件があり、実務では債権者がどのような財産調査を行ったかをまとめた「財産調査結果報告書」を提出して疎明します。さらに、相手が申立ての日前3年以内に財産開示期日で財産を開示している場合は、原則として再度の申立てはできません(新たな財産取得や転職があった場合は例外)。
申立先は、相手(債務者)の住所地を管轄する地方裁判所です。取り決めをした家庭裁判所ではない点に注意してください。
費用と手続きの流れ
裁判所に納める手数料は財産開示事件1件につき2,000円で、このほかに予納郵便料(裁判所により6,000〜7,000円程度)がかかります。差押えまで見据えても、裁判所実費は1万円前後に収まるのが一般的です。
手続きの流れは次のとおりです。申立てが認められると裁判所が実施決定を出し、相手に送達されます。送達から1週間で決定が確定すると、財産開示期日(約1ヶ月後)と財産目録の提出期限が指定されます。期日には申立人も出頭でき、裁判所の許可を得て相手に質問できます。なお、2026年5月21日施行の改正民事執行法により、一定の要件のもとウェブ会議や電話での期日参加も可能になりました。

| 段階 | 内容 | 期間・費用の目安 |
|---|---|---|
| 申立て | 債務者の住所地の地方裁判所へ | 手数料2,000円+郵便料6,000円前後 |
| 実施決定・送達 | 裁判所が決定し相手に送達 | 送達から1週間で確定 |
| 財産目録の提出 | 相手が財産の一覧を裁判所に提出 | 期日の7〜10日前が提出期限 |
| 財産開示期日 | 相手が出頭し陳述・申立人が質問可 | 実施決定確定から約1ヶ月後 |
| 差押えの申立て | 判明した財産へ強制執行 | 差押命令の手数料4,000円 |
無視したらどうなる?刑事罰という強力なプレッシャー
2020年改正の最大のポイントは、財産開示手続の実効性が大幅に強化されたことです。正当な理由なく期日に出頭しない、宣誓を拒む、虚偽の陳述をするといった行為は「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰の対象になりました。改正前は30万円以下の過料(行政罰)にとどまり「無視したもの勝ち」と言われていましたが、現在は前科がつく可能性のある犯罪です。実際に、養育費の財産開示手続を無視した元配偶者が刑事罰を受けた事例も報道されています。
この刑事罰の存在自体が強い心理的プレッシャーになるため、「財産開示を申し立てたら、期日を待たずに相手が支払いに応じた」というケースも少なくありません。
相手が出頭しなくても大丈夫:第三者からの情報取得手続
相手が財産開示期日に出頭しなかった場合や、開示内容が信用できない場合には、「第三者からの情報取得手続」(民事執行法204条以下)を利用できます。これは、裁判所が市区町村・年金機構(勤務先情報)、銀行・証券会社(預金・株式情報)、法務局(不動産情報)に照会をかけ、相手の財産情報を取得する制度です。
特に養育費債権者は、市区町村や年金機構から「相手の勤務先」の情報を取得できる点が強力です。勤務先が分かれば給与差押えが可能になり、一度の申立てで将来分の養育費まで毎月自動的に回収できます。なお、勤務先情報の取得には原則として財産開示手続を先に実施していること(財産開示前置)が必要です。
さらに2026年4月施行の改正民事執行法では、養育費等について財産開示の申立てと同時に給与差押えの申立てをしたとみなされる「ワンストップ執行手続」が導入されました。相手が財産を開示しなければ裁判所が市区町村に情報提供命令を出し、判明した給与をそのまま差し押さえる流れまで一体化され、従来より少ない手続き負担で回収まで到達できるようになっています。
自分でやるか、弁護士に任せるか
財産開示手続は本人でも申立て可能ですが、財産調査結果報告書の作成、申立要件の立証、期日での効果的な質問、その後の情報取得手続・差押えへの接続など、専門的な判断が必要な場面が多い手続きです。書類の不備で申立てが却下されれば、時間だけが失われます。
弁護士に依頼すれば、財産開示から情報取得手続、差押えまでを一貫して任せられ、回収の確実性が大きく高まります。着手金0円・完全成功報酬制の事務所なら、初期費用の持ち出しなく依頼できるため、「相手の財産が分からない」段階からでも相談する価値があります。
この記事に関連する法律事務所
財産開示・第三者からの情報取得手続を使った財産調査から回収まで対応できる事務所です。
あわせて読みたい
※本記事は一般的な法制度の解説であり、個別のケースへの法的助言ではありません。具体的な判断は必ず弁護士にご相談ください。