履行勧告・履行命令とは?無料でできる養育費の督促制度

「調停でしっかり決めたのに、どうして払ってくれないの…」と、不安や怒りでいっぱいになっていませんか。私も同じ経験があるので、そのお気持ちは痛いほど分かります。でも、調停や審判で決めた約束なら、家庭裁判所が無料でサポートしてくれる「履行勧告」という制度が使えます。まずはこの制度で相手にプレッシャーをかける方法を、一緒に確認していきましょうね。
やり方は一つずつ、この記事で確認できます。焦らなくて大丈夫ですよ。
まず、これだけは知ってください
- 履行勧告は、家庭裁判所から相手に「約束通り払いなさい」と注意してもらえる無料の制度です
- 調停調書や審判書がある場合のみ利用でき、公正証書や当事者間の合意書では利用できません
- 強制力はないため、無視された場合は速やかに「強制執行(差押え)」へ切り替える決断が重要です
1. 履行勧告とは?家庭裁判所からの「支払いなさい」という警告
履行勧告(りこうかんこく)とは、家庭裁判所の調停や審判で決めた養育費の支払いを相手が守らない場合に、家庭裁判所が「取り決めを守るように」と勧告してくれる制度です。申出を受けた家庭裁判所は、相手の支払い状況を調査した上で、電話や書面で支払いを促します。
最大のメリットは、手軽さと費用がかからないことです。申出は無料で、書面だけでなく口頭や電話でも受け付けてもらえます。申出先は、養育費の取り決めを行った家庭裁判所です。弁護士に依頼しなくても、あなた自身ですぐに手続きを始めることができます。
「裁判所から直接連絡が来る」こと自体が、相手にとって大きな心理的プレッシャーになります。そのため、単に支払いを忘れていただけの相手や、世間体を気にする相手には、これだけで支払いが再開される効果が期待できます。
| 方法 | 手順 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 電話 | 調停を行った家庭裁判所に電話し「履行勧告をお願いしたい」と伝える | 通話10〜15分 |
| 窓口(口頭) | 家庭裁判所の窓口で直接申出。事件番号と未払い状況を伝える | 来庁30分程度 |
| 書面(郵送) | 「履行勧告申出書」を記入し、家庭裁判所に郵送する | 到着後1〜2週間で勧告実施 |
履行勧告の申出に必要なもの
- 事件番号(調停調書や審判書に記載されている「令和〇年(家イ)第〇〇号」などの番号)
- 未払い額の計算メモ(いつから何ヶ月分、合計いくら未払いか)
- 振込先口座の通帳(未払いの事実を説明できるように手元に用意)
「裁判所に連絡するなんて緊張する…」と思うかもしれませんが、担当の書記官さんは丁寧に対応してくれますよ。まずは電話で相談してみるだけでも大丈夫です。
2. 重要な注意点:公正証書だけでは利用できない
履行勧告は、あくまで「家庭裁判所の手続きで決めた事項」を対象とする制度です。つまり、調停調書、審判書、人事訴訟の判決書などがある場合にのみ利用できます。公証役場で作成した「公正証書」や、当事者間で作った「離婚協議書」では利用できません。
もし、公正証書で取り決めているのに未払いになった場合は、履行勧告ではなく、内容証明郵便での催告や、強制執行(差押え)を検討することになります。特に「強制執行認諾文言」が付いた公正証書があれば、調停を経ずに直接、相手の給与や預貯金を差し押さえる手続きに進むことができます。
手元の書類が「調停調書」か「公正証書」か確認を
自分がどの書類を持っているかによって、取れる手段が全く異なります。調停調書なら履行勧告が使えますが、公正証書なら使えません。まずは手元の書類のタイトルを確認してください。
3. 履行勧告の限界と、次の一手「履行命令」
手軽で便利な履行勧告ですが、法的な「強制力」がないという明確な限界があります。相手が裁判所からの勧告を無視しても、それだけでペナルティはなく、無理やり財産を取り上げることもできません。統計的にも、履行勧告だけで支払いが継続的に再開されるケースは一部にとどまります。
勧告に応じない場合の次の手段として「履行命令(りこうめいれい)」という制度があります。これは、家庭裁判所が相当の期間を定めて支払いを命じるもので、正当な理由なく従わない場合は10万円以下の過料(かりょう)が科されます。申立てには500円程度の手数料がかかります。
ただし、この過料は国に納められる罰金のようなものであり、あなたに未払い分が支払われるわけではありません。また、実務上は履行命令まで進むケースは多くなく、履行勧告で効果がなければ、より確実な「強制執行」に進むのが一般的です。

| 制度 | 費用 | 強制力 | 対象となる取り決め |
|---|---|---|---|
| 履行勧告 | 無料 | なし(事実上の説得) | 調停・審判・判決 |
| 履行命令 | 約500円 | 違反に10万円以下の過料 | 調停・審判・判決 |
| 強制執行(差押え) | 実費1万円前後〜 | 給与・預金を直接回収 | 調停調書・審判書・判決・執行認諾文言付き公正証書 |
4. 履行勧告を使うべきタイミングと戦略
履行勧告は「無料で・すぐに・自分で」できる反面、強制力がないため、未払いが始まった初期段階で「裁判所からの一声で払う相手かどうか」を見極める試金石として使うのが合理的です。1〜2回の勧告で支払いが再開されなければ、それ以上勧告を繰り返しても状況は変わりません。
その場合は、給与差押えなどの強制執行に速やかに切り替えるべきです。調停調書や審判書は、そのまま強制執行に使える「債務名義(強制執行を可能にする公的書面)」なので、履行勧告を経ずにいきなり差押えを申し立てることも可能です。
未払いが長期化するほど、時効で請求権が消滅するリスクが高まります。調停や審判で決めた養育費の時効は10年ですが、各支払期日から進行するため、古いものから順に消えていきます。また、相手の転職や転居で回収難易度も上がるため、「勧告で様子見」に時間をかけすぎないことが重要です。
「様子見」は未払い額を増やすだけです
「そのうち払ってくれるかも」と待っている間に、未払い額はどんどん膨らみ、相手は「払わなくても逃げ切れる」と学習してしまいます。行動は早ければ早いほど回収率が高まります。
相手の良心に期待しすぎないことも、自分を守るためには大切です。ダメなら次!と割り切って、確実な方法に切り替えましょう。
5. 迷ったら弁護士の無料相談を活用する
「自分のケースは履行勧告で動く相手か、それとも最初から差押えにいくべきか」と迷う場合は、弁護士の無料相談を活用するのが近道です。専門家の視点から、相手の性格や職業、財産状況に応じた最適な回収プランをアドバイスしてもらえます。
特に、相手の勤務先が分からない場合でも、2026年4月施行の改正民事執行法による「ワンストップ手続き」を利用すれば、財産調査から差押えまでスムーズに進めることができます。弁護士に依頼すれば、こうした複雑な手続きもすべて任せられます。
法テラスの条件を満たせば、無料で法律相談(同一問題で3回まで)が受けられますし、最近は「着手金0円・完全成功報酬制」で養育費回収を引き受ける法律事務所も増えています。一人で抱え込まず、まずは専門家の力を借りることを検討してみてください。
「弁護士に頼むお金がない」と思っていませんか?法テラスなら無料相談ができますし、着手金0円の事務所もあります。まずは相談だけでも、状況は大きく変わりますよ。
よくある質問
Q.履行勧告は何度でもお願いできますか?
Q.相手の今の住所や電話番号が分かりません。履行勧告はできますか?
Q.履行勧告をすると、相手が逆上してこないか心配です。
Q.履行勧告の申出は、どこの家庭裁判所でもできますか?
Q.履行勧告を申し出たら、時効はストップしますか?
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※こちらでの解説は一般的な内容であり、個別のケースへの法的助言ではありません。具体的な判断に迷うときは、必ず専門家にご相談ください。