履行勧告・履行命令とは?無料でできる養育費の督促制度

履行勧告とは:家庭裁判所からの「支払いなさい」という勧告
履行勧告とは、家庭裁判所の調停・審判・人事訴訟で決めた養育費などの義務を守らない相手に対し、家庭裁判所が調査のうえ「取り決めを守るように」と勧告する制度です。申出を受けた家庭裁判所は、相手の履行状況を調査し、電話や書面で支払いを促します。
最大のメリットは手軽さです。費用は無料で、申出は書面だけでなく口頭や電話でも可能です。申出先は、取り決めの手続きをした家庭裁判所(調停を行った裁判所)です。弁護士に依頼しなくても、当事者本人がすぐに利用できます。
「裁判所から連絡が来る」こと自体が相手への心理的プレッシャーになるため、悪意なく支払いを怠っていた相手や、世間体を気にする相手には一定の効果が期待できます。
重要な注意点:公正証書だけでは利用できない
履行勧告・履行命令は「家庭裁判所の手続きで決めた事項」を対象とする制度です。つまり、調停調書・審判書・人事訴訟の判決などがある場合に利用でき、公正証書や当事者間の離婚協議書で取り決めた養育費については利用できません。
公正証書で取り決めている方が未払いに遭った場合は、履行勧告ではなく、内容証明での催告や強制執行(差押え)を検討することになります。強制執行認諾文言付き公正証書があれば、調停を経ずに直接差押えの申立てが可能です。
履行勧告の限界と、次の一手「履行命令」
履行勧告には法的な強制力がありません。相手が勧告を無視しても、それだけでペナルティはなく、支払いを強制することもできません。統計的にも、履行勧告だけで支払いが再開されるのは一部にとどまります。
勧告に応じない場合の次の手段が「履行命令」です。家庭裁判所が相当の期間を定めて履行を命じ、正当な理由なく従わない場合は10万円以下の過料が科されます(家事事件手続法290条)。ただし過料は国に納められるものであり、あなたに未払い分が支払われるわけではありません。また実務上、履行命令まで進むケースは多くなく、履行勧告で効果がなければ強制執行に進むのが一般的です。
| 制度 | 費用 | 強制力 | 対象となる取り決め |
|---|---|---|---|
| 履行勧告 | 無料 | なし(事実上の説得) | 調停・審判・判決 |
| 履行命令 | 無料 | 違反に10万円以下の過料 | 調停・審判・判決 |
| 強制執行(差押え) | 実費1万円前後〜 | 給与・預金を直接回収 | 調停調書・審判書・判決・執行認諾文言付き公正証書 |
履行勧告を使うべきタイミングと戦略
履行勧告は「無料で・すぐに・自分で」できる反面、強制力がないという明確な限界があります。したがって、未払いが始まった初期段階で「裁判所からの一声で払う相手かどうか」を見極める試金石として使うのが合理的です。1〜2回の勧告で支払いが再開されなければ、それ以上勧告を繰り返しても状況は変わりません。
その場合は、給与差押えなどの強制執行に速やかに切り替えるべきです。調停調書や審判書はそのまま強制執行に使える債務名義なので、履行勧告を経ずにいきなり差押えを申し立てることも可能です。未払いが長期化するほど時効(調停・審判なら10年、ただし各支払期日から進行)で消える分が増え、相手の転職・転居で回収難易度も上がるため、「勧告で様子見」に時間をかけすぎないことが重要です。
どの手段から着手すべきか迷う場合は、弁護士の無料相談で「自分のケースは勧告で動く相手か、最初から差押えにいくべきか」を確認するのが近道です。
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※本記事は一般的な法制度の解説であり、個別のケースへの法的助言ではありません。具体的な判断は必ず弁護士にご相談ください。