相手が無職・失業した!養育費は払ってもらえない?減額請求への対応と回収方法

「仕事をやめたから養育費は払えない」「給料が下がったから減額してほしい」突然そんなことを言われたら、これからの生活が不安になってしまいますよね。でも、相手が無職になったからといって、すぐに養育費がゼロになるわけではありません。本当に払えない事情があるのか、それとも払いたくないだけなのかを見極め、冷静に対処することが大切です。いざというときにどう動けばいいのか、一緒に確認していきましょう。
まず、これだけは知ってください
- 相手が無職でも、健康で働ける状態であれば「潜在的稼働能力」があるとみなされ、養育費の支払い義務は無くなりません
- 「失業したから減額して」と言われても口約束ですぐに応じず、一時的なものか恒久的なものかを見極めることが重要です
- 未払いになった場合でも、相手の預貯金や再就職後の給与を差し押さえることは可能です(失業保険そのものは差し押さえできません)
1. 「無職=養育費ゼロ」ではない!潜在的稼働能力とは
相手が仕事を辞めて無職になったり、収入が大きく下がったりした場合、「収入がないのだから養育費は払えない」と主張してくることがあります。しかし、法律上、無職だからといって自動的に養育費がゼロになるわけではありません。
健康で働く能力があり、年齢的にも就労が可能であるにもかかわらず、自分の意思で働いていない場合、裁判所は「働こうと思えば働ける能力(潜在的稼働能力)」があると判断します。この場合、実際の収入がゼロであっても、本来得られるはずの収入があるものとして養育費が算定されます。
具体的には、過去の収入実績や、厚生労働省が発表している「賃金センサス(年齢や学歴別の平均賃金)」を基準にして、収入が擬制(仮にその収入があるものとして扱うこと)されます。つまり、「働けるのに働かない」という言い訳は通用しないのです。

「潜在的稼働能力」という言葉は少し難しいですが、「健康で働けるなら、平均的なお給料をもらえるはずだよね」とみなして計算する仕組みのことです。
2. 「本当に払えない」と「払いたくないだけ」の見分け方
相手が無職になった理由によっては、潜在的稼働能力が認められず、養育費の減額や免除がやむを得ないケースもあります。相手の主張が「本当に払えない」事情によるものなのか、単に「払いたくないだけ」なのかを見極めることが重要です。
病気やケガ、重い障害などで長期間働くことができない場合や、高齢で再就職が極めて困難な場合は、客観的に見て「働く能力がない」と判断される可能性が高くなります。このような場合は、診断書などの証明を求めた上で、一時的な減額や免除に応じざるを得ないこともあります。
一方、自己都合で突然仕事を辞めた、働く意欲がない、実家暮らしで生活に困っていないから働かない、といった場合は「払いたくないだけ」とみなされます。この場合は、前述の潜在的稼働能力を主張し、適正な養育費を請求していくことになります。
| 状況 | 潜在的稼働能力の判断 | 養育費の扱い |
|---|---|---|
| 自己都合退職・働く意欲がない | 認められやすい(賃金センサス等で算定) | 原則として減額・免除されない |
| 病気・ケガ・重い障害 | 認められにくい(働くことが困難) | 減額や免除が認められる可能性が高い |
| 会社の倒産・リストラ | 一時的に認められない期間があることも | 再就職までの期間、一時的な減額の可能性あり |
3. 「失業したから減額して」と言われたときの対応手順
相手から「失業した」「給料が下がった」と減額を求められた場合、焦ってすぐに応じる必要はありません。まずは冷静に状況を確認し、以下の手順で対応しましょう。
第一に、口約束で安易に減額に同意しないことです。一度合意してしまうと、後から元の金額に戻すのが難しくなることがあります。相手の失業が一時的なもの(すぐに再就職する予定がある)なのか、恒久的なもの(病気などで長期療養が必要)なのかを見極めるため、離職票や診断書などの客観的な資料の提示を求めましょう。
もし、相手の事情がやむを得ず、減額に応じる場合でも、「再就職するまでの〇ヶ月間だけ〇円に減額する」「再就職したら元の金額に戻す」といった条件を明確にし、必ず書面(できれば公正証書)で合意し直すことが重要です。
減額請求されたときの確認ポイント
- 退職の理由は何か(自己都合か、会社都合か、病気か)
- 客観的な証明資料(離職票、診断書など)はあるか
- 再就職に向けた活動をしているか
- 減額に応じる場合、期間や条件を明確にしているか
口約束での減額合意は危険です
LINEや電話で「今月は厳しいから半額でいい?」と言われ、「仕方ないね」と返事をしてしまうと、減額に合意したとみなされる恐れがあります。減額に応じる場合は、必ず期間や条件を定めた書面を作成しましょう。
4. 相手が減額調停を起こしてきた場合の流れ
話し合いでまとまらない場合、相手が家庭裁判所に「養育費減額調停」を申し立ててくることがあります。調停を申し立てられたからといって、必ず減額されるわけではありません。
調停では、相手の失業や収入減が、養育費を取り決めた当時には予測できなかった「事情の変更」に該当するかどうかが争点になります。会社の倒産やリストラ、予期せぬ病気などは「事情の変更」と認められやすいですが、自己都合退職や、養育費の支払いを免れるためにわざと収入を下げたような場合は、認められにくい傾向にあります。
調停委員に対しては、相手に潜在的稼働能力があることや、自己都合による退職であることを主張し、安易な減額には応じられないという姿勢を示すことが大切です。調停が不成立になれば、裁判官が判断する「審判」に移行します。
5. 無職でも回収できる?失業保険や預貯金の差し押さえ
相手が無職になり、養育費の支払いがストップしてしまった場合でも、回収を諦める必要はありません。給与以外の財産から回収する方法があります。
まず、相手が失業保険(雇用保険の基本手当)を受給している場合、「失業保険そのものを差し押さえることはできるのか?」という疑問を持つ方が多いですが、法律上、失業保険の受給権を直接差し押さえることは禁止されています(雇用保険法第11条)。
しかし、失業保険が相手の銀行口座に振り込まれた後は、単なる「預貯金」として扱われるため、その預貯金口座を差し押さえることは可能です。また、相手が再就職した場合は、新しい勤務先からの給与を差し押さえることができます。そのためには、公正証書や調停調書などの「債務名義」が必要になります。
| 財産の種類 | 差し押さえの可否 | ポイント |
|---|---|---|
| 失業保険の受給権 | 不可(雇用保険法11条で禁止) | 受給権そのものは差し押さえできない |
| 口座に振り込まれた後の失業保険 | 可能 | 預貯金として扱われるため差し押さえ対象になる |
| 預貯金 | 可能 | 金融機関名・支店名の特定が必要(情報取得手続が使える) |
| 再就職後の給与 | 可能 | 手取りの2分の1まで(養育費の場合の特例) |
| 実家の親の財産 | 不可 | 支払い義務はあくまで本人のみ |
6. 支払いが止まっている間にできること
相手が無職で支払いが滞っている間、ただ待っているだけではなく、将来の回収に向けて準備をしておくことが大切です。まず、未払いになっている月と金額を正確に記録しておきましょう。通帳の記帳をこまめに行い、証拠を残します。
また、養育費には時効があります。原則として、毎月の支払い期日から5年(調停や裁判で決めた場合は10年)で時効にかかってしまいます。時効の完成を防ぐための手続き(内容証明郵便の送付など)を忘れずに行いましょう。
さらに、養育費が支払われず生活が苦しい場合は、お住まいの自治体で「児童扶養手当」の手続きを確認してください。児童扶養手当を受給したからといって、相手の養育費支払い義務がなくなるわけではありません。利用できる公的支援はしっかりと活用し、生活の基盤を守りましょう。
児童扶養手当をもらっても養育費は減りません
相手から「児童扶養手当をもらっているなら、養育費は払わなくていいだろう」と言われることがありますが、これは間違いです。公的支援は相手の支払い義務を免除するものではありません。
相手の状況が変わると不安になりますが、あなたと子どもの権利は法律で守られています。一人で抱え込まず、公的な支援も頼りながら、できることから進めていきましょうね。
よくある質問
Q.相手が「無職になったから養育費は払えない」と言ってきました。どうすればいいですか?
Q.「再就職するまで養育費を待ってほしい」と言われました。応じるべきですか?
Q.相手が失業保険をもらっているようです。これを差し押さえることはできますか?
Q.相手が自己都合で仕事を辞めて減額調停を起こしてきました。減額されてしまいますか?
Q.養育費がもらえず生活が苦しいので児童扶養手当を申請したいのですが、相手の支払い義務はどうなりますか?
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※こちらでの解説は一般的な内容であり、個別のケースへの法的助言ではありません。具体的な判断に迷うときは、必ず専門家にご相談ください。