自営業・無職の相手から養育費を回収する方法【会社員と何が違う?】

最終更新: 2026-07-29|養育費請求ナビ編集チーム|読了目安 約7
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相手が自営業や無職の場合、給与差押えが使えず養育費の回収を諦めていませんか?確定申告書の見方、売掛金や口座の差押え、潜在的稼働能力による算定、2026年施行のワンストップ手続きまで、回収の具体策を詳しく解説します。
こはる

「相手が自営業だから給与の差押えができない」「無職だから払えないと言われた」と、養育費の回収を諦めかけていませんか。私も、相手の収入が見えにくくて不安になった経験があります。でも、自営業や無職だからといって、養育費を払わなくていい理由にはなりません。会社員とは違うアプローチが必要なだけです。相手の状況に合わせた具体的な回収方法を、一緒に確認していきましょうね。

まず、これだけは知ってください

  • 自営業者の場合、給与の代わりに「売掛金(取引先への債権)」や「事業用口座」を差し押さえることができます
  • 無職であっても「働こうと思えば稼げる能力(潜在的稼働能力)」があるとみなされれば、養育費の支払い義務は免除されません
  • 2026年施行の「ワンストップ手続き」や「情報開示命令」により、相手の財産や収入を調査しやすくなりました

自営業者の年収はどう計算する?確定申告書の見方

相手が自営業(個人事業主やフリーランス)の場合、会社員のように源泉徴収票がないため、収入の把握が難しく感じられます。自営業者の年収を計算する基本は、「確定申告書」を確認することです。

具体的には、確定申告書の「課税される所得金額」をベースにします。ただし、これだけでは実際の収入より少なく見えてしまうため、税金計算上は引かれている「青色申告特別控除」や、実際にはお金が出ていっていない「減価償却費」などを足し戻して計算します。これが養育費算定の基礎となる「自営業者の総収入」です。

計算した総収入をもとに、裁判所の「養育費算定表」を見ます。算定表には「給与所得者」と「自営業者」の欄があるので、必ず「自営業者」の欄を使って適正な養育費の金額を確認してください。

「収入を少なく申告している」と疑われる場合

自営業者は経費を多く計上して所得を低く見せることがあります。不自然に生活水準が高い場合は、調停で実際の生活状況(家賃や車のローンなど)から収入を推認(推測して認定)してもらうことができます。また、2026年の新制度により、裁判所が「情報開示命令」を出せるようになり、違反した場合は10万円以下の過料(罰金のようなもの)が科されるため、隠し通すことは難しくなっています。

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自営業者から回収するターゲットは「売掛金」と「口座」

会社員であれば「給与」を差し押さえるのが最も確実ですが、自営業者には給与がありません。そこでターゲットになるのが、相手が取引先から受け取る予定のお金である「売掛金(うりかけきん)」や「事業用口座」です。

売掛金を差し押さえると、相手の取引先からあなたに直接お金が支払われるようになります。相手にとっては取引先に差押えの事実が知られ、信用問題に関わるため、差押えを避けるために自ら支払いに応じるプレッシャーにもなります。

また、事業で使っている銀行口座を差し押さえるのも効果的です。事業用口座が凍結されると仕事に大きな支障が出るため、強力な回収手段となります。その他にも、相手が所有している不動産や車を差し押さえる方法もありますが、手続きが複雑で費用もかかるため、まずは売掛金や口座を狙うのが実務では一般的です。

差押えのターゲットメリットデメリット
売掛金(取引先への債権)取引先から直接回収できる。相手へのプレッシャーが大きい取引先(会社名など)を特定する必要がある
事業用口座(預貯金)残高があれば一括回収できる。事業への影響が大きい銀行名・支店名の特定が必要。残高がないと空振りになる
不動産・車高額な回収が見込める場合がある手続きが非常に複雑で費用(数十万円〜)も高額
こはる

自営業の方にとって、取引先からの信用や事業用口座は命綱です。そこを押さえることができると知っておくだけで、交渉の切り札になりますよ。

相手が無職の場合、養育費は払ってもらえない?

「今は無職だから養育費は払えない」と言われるケースは少なくありません。しかし、無職だからといって直ちに養育費の支払い義務がなくなるわけではありません。

健康で働く能力があるのに働いていない場合、実務では「潜在的稼働能力(働こうと思えば稼げる能力)」があるとみなされます。この場合、過去の職歴や、厚生労働省が発表している「賃金センサス(平均賃金の統計データ)」を基準にして、本来得られるはずの収入を仮定して養育費を算定します。

ただし、重い病気やケガで本当に働けない場合や、高齢で就労が困難な場合は、支払い義務が免除されたり、減額されたりすることがあります。相手の無職の理由が「働けるのに働かない」のか「本当に働けない」のかを見極めることが重要です。

無職の相手に請求する際のチェックポイント

  • 健康状態で働くことに支障はないか
  • 過去の職歴や資格、収入はどのくらいだったか
  • 失業保険(雇用保険)を受給していないか
  • 実家からの援助など、他の収入源はないか

失業が一時的な場合の対処法

相手がリストラや会社の倒産などで一時的に失業している場合、すぐに強制執行などの強硬手段に出るのが得策とは限りません。相手に支払う意思があっても、本当に手元にお金がない状態では回収できないからです。

このような場合は、まず家庭裁判所の「履行勧告(りこうかんこく)」を利用して様子を見るのも一つの方法です。履行勧告は、調停調書などがある場合に無料で利用でき、裁判所から相手に支払いを促してくれます。

また、相手から「養育費減額調停」を起こされる可能性もあります。その場合は、再就職するまでの期間だけ一時的に減額に応じ、再就職後に元の金額に戻す、あるいは未払い分を分割で上乗せして払ってもらうといった柔軟な取り決めをすることも検討しましょう。

履行勧告・履行命令について詳しく見る
無料で利用できる裁判所からの督促手続きについて解説しています

財産や取引先が分からない!2026年新制度の活用

自営業者の売掛金や口座を差し押さえたくても、「どこの会社と取引しているか分からない」「どこの銀行を使っているか知らない」という壁にぶつかることがあります。そんな時に強力な武器になるのが、裁判所の「財産開示手続」と「第三者からの情報取得手続」です。

これらの手続きを使えば、相手を裁判所に呼び出して財産を答えさせたり(違反すると6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰があります)、銀行の本店に照会をかけて全支店の口座情報を取得したりすることができます。

さらに、2026年4月に施行された改正民事執行法により、「ワンストップ手続き」が導入されました。これにより、以前は別々に行う必要があった「財産調査」と「差押え」を、1回の申立てでスムーズに進められるようになり、自営業相手の回収にかかる時間と手間が大幅に短縮されています。

2026年施行ワンストップ手続きの図解:財産調査(情報取得)から差押えまでが1回の申立てでスムーズに進む流れ
ワンストップ手続きにより、相手の財産を特定してから差し押さえるまでのタイムラグが減り、財産を隠されるリスクが低くなりました

手続きには「債務名義」が必要です

これらの強力な財産調査や差押えの手続きを利用するには、強制執行認諾文言付きの公正証書や、調停調書などの「債務名義(強制執行を可能にする公的書面)」が必要です。単なる口約束や普通の念書では利用できないため注意してください。

こはる

「相手の財産が分からないから無理」と諦める時代は終わりました。法律は少しずつですが、確実に私たちを守る方向に変わってきていますよ。

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相手の財産を調査するための強力な制度について解説しています

よくある質問

Q.相手が自営業で、確定申告をしていない(無申告)ようです。どうすればいいですか?
A.無申告の場合でも、実際の生活状況(家賃、車の所有、頻繁な外食など)から収入を推認して養育費を算定することが可能です。また、調停の場で裁判所から「情報開示命令」を出してもらい、通帳の履歴や売上帳簿などの提出を求めることができます。証拠となる生活ぶりの写真やSNSの投稿などを集めておくと有利になります。
Q.相手が「会社を辞めて無職になったから払えない」と言ってきました。応じるべきですか?
A.すぐに減額や免除に応じる必要はありません。自己都合退職などで「働こうと思えば働ける」状態であれば、潜在的稼働能力(以前の収入や賃金センサス)を基準に養育費が算定されるのが一般的です。まずは相手の退職理由や現在の就職活動の状況を具体的に確認し、必要であれば調停で話し合うことをお勧めします。
Q.自営業の相手の「売掛金」を差し押さえるには、何が必要ですか?
A.売掛金を差し押さえるには、相手の取引先(第三債務者)の「会社名」と「住所」を特定する必要があります。取引先が複数ある場合は、継続的に大きな取引がある会社を狙うのが効果的です。相手のSNSでの発信、過去の会話のメモ、名刺などが取引先を特定するヒントになります。
Q.相手が生活保護を受けている場合でも、養育費は請求できますか?
A.相手が生活保護を受給している場合、生活保護費は最低限度の生活を保障するためのものであり、差押えが法律で禁止されています。そのため、現実的には養育費の回収は非常に困難です。ただし、相手が生活保護を抜け出し、再び収入を得るようになった場合には、改めて請求することが可能です。
Q.自営業の相手から回収するのは難しそうなので、弁護士に頼むべきでしょうか?
A.自営業者からの回収は、会社員に比べて財産の特定や手続きが複雑になることが多いため、弁護士に依頼するメリットは非常に大きいです。特に、財産開示手続や売掛金の差押えなどは専門的な知識が必要です。法テラスを利用すれば無料相談や費用の立替え制度もあるため、まずは一度相談してみることをお勧めします。

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※こちらでの解説は一般的な内容であり、個別のケースへの法的助言ではありません。具体的な判断に迷うときは、必ず専門家にご相談ください。