「養育費はいらない」と放棄した後でも請求できる?再請求の条件と手順

「離婚を急ぐあまり、養育費はいらないと言ってしまった」「公正証書に請求しないと書いてしまった」と後悔していませんか。でも、諦めないでください。養育費は子どものための大切なお金なので、一度放棄したからといって二度と請求できないわけではありません。どのような場合に再請求できるのか、一緒に確認していきましょうね。
まず、これだけは知ってください
- 養育費は子どもの権利(扶養請求権)であるため、親同士の合意で完全に放棄することはできません
- 「いらない」と合意した後でも、事情の変更があれば後から養育費を請求することが可能です
- 過去にさかのぼって請求することは原則としてできないため、早めに請求の手続きを始めることが重要です
1. 「養育費はいらない」という合意の法的効力
離婚する際、相手と「養育費は支払わない」「一切請求しない」と約束してしまうケースは少なくありません。親権を得るためや、早く離婚を成立させるために、やむを得ず合意してしまうことが多いからです。しかし、このような合意をしたからといって、養育費を二度と請求できなくなるわけではありません。
法律上、親は子どもに対して扶養義務を負っており、子どもは親に対して扶養を求める権利(扶養請求権)を持っています(民法877条)。この扶養請求権は子ども自身の権利であるため、親が勝手に放棄したり、処分したりすることはできないとされています。
したがって、親同士で「養育費を請求しない」と合意したとしても、それはあくまで「親同士の約束」に過ぎず、子ども自身が親に対して扶養料を請求する権利まで消滅するわけではありません。子どもに代わって、親権者が後から養育費を請求することは十分に可能です。

| 放棄・合意の形 | 親同士の合意としての効力 | 後からの請求 |
|---|---|---|
| 口頭で「いらない」と言った | 証拠が乏しく効力も限定的 | 請求できる可能性が高い |
| 離婚協議書に「請求しない」と記載 | 親同士の合意としては有効 | 事情変更があれば請求可能 |
| 公正証書に「月額0円」と記載 | 親同士の合意としては有効 | 事情変更があれば調停・審判で変更可能 |
| 清算条項(一切の請求をしない) | 財産分与等には有効 | 子の扶養請求権には及ばず請求可能 |
「公正証書に書いてしまったから絶対無理だ」と思い込んでいる方も多いですが、子どもの権利は守られているので安心してくださいね。
2. 後から養育費を請求できる「事情変更」とは
一度「養育費はいらない」と合意した場合でも、その後に「事情の変更」があった場合には、養育費の支払いを求めることができます。事情変更とは、離婚時に予測できなかったような大きな状況の変化のことです。
例えば、離婚時には十分な収入があったものの、病気やリストラで収入が激減してしまった場合や、子どもが大きな病気をして医療費がかかるようになった場合などが該当します。また、子どもが成長して進学費用が必要になった場合も、事情変更として認められる可能性があります。
このような事情変更が認められれば、過去の合意にかかわらず、家庭裁判所の調停や審判で養育費の支払いが認められるケースが多くあります。子どもの生活や福祉を守ることが最優先されるからです。
事情変更として認められやすいケース
- 病気やケガ、リストラなどで自分の収入が大幅に減少した
- 子どもが病気やケガをして、高額な医療費が必要になった
- 子どもが成長し、想定以上の教育費(進学費用など)がかかるようになった
- 相手の収入が離婚時よりも大幅に増加した
過去の分はさかのぼって請求できない
養育費を再請求できるといっても、原則として「請求した時点」からの分しか認められません。「いらない」と合意してから現在までの過去の分をさかのぼって請求することはできないため、生活が苦しくなったら早めに行動することが大切です。
3. 面会交流と引き換えに放棄した場合
「子どもに会わせない代わりに、養育費もいらない」という条件で離婚するケースもあります。しかし、養育費と面会交流は、本来まったく別の問題です。養育費は子どもの生活を支えるためのお金であり、面会交流は子どもの健やかな成長のための権利です。
そのため、面会交流を拒否することを条件に養育費を放棄する合意は、子どもの利益に反するものとして、法的に無効と判断される可能性があります。このような合意があったとしても、事情が変われば養育費を請求することは可能です。
ただし、養育費を請求することで、相手から「それなら子どもに会わせろ」と面会交流を求められる可能性はあります。その場合は、子どもの気持ちや状況を最優先に考え、必要であれば家庭裁判所の調停で話し合うことになります。
4. 養育費を再請求するための具体的な手順
「養育費はいらない」と合意した後に再請求する場合、まずは相手との話し合い(協議)から始めます。事情が変わって生活が苦しいこと、子どものために養育費が必要であることを伝え、支払いに応じてもらえるよう交渉します。
話し合いで合意できれば、その内容を必ず書面(できれば公正証書)に残しておきましょう。しかし、相手が「一度いらないと言っただろう」と拒否したり、話し合いに応じなかったりする場合は、家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立てることになります。
調停では、調停委員を交えて話し合いが行われます。なぜ養育費が必要になったのか(事情変更の理由)を客観的に説明し、双方の収入状況などをもとに適切な金額を取り決めます。調停でもまとまらない場合は、裁判官が判断する「審判」に移行します。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 話し合い(協議) | 相手に事情を説明し、養育費の支払いを求める | 感情的にならず、子どものために必要であることを伝える |
| 2. 調停の申し立て | 家庭裁判所で調停委員を交えて話し合う | 収入証明や事情変更を裏付ける資料(診断書など)を準備する |
| 3. 審判 | 裁判官が一切の事情を考慮して決定する | 法的な観点から養育費の支払いが妥当かどうかが判断される |
5. 2026年4月施行の改正民法と養育費
2026年4月に施行される改正民法では、養育費の確保に向けた新しい制度が導入されます。これまで養育費の取り決めがなかった場合でも、一定の条件を満たせば「法定養育費」として子ども1人あたり月額2万円を請求できるようになります(※原則として施行日以降の離婚に適用)。
また、養育費の未払いが発生した場合に備えて、「先取特権(さきどりとっけん)」という優先権が認められます。これにより、公正証書などの債務名義(強制執行に使える公的文書)がなくても、一定の要件を満たせば相手の財産から優先的に養育費を回収しやすくなります(上限は子ども1人あたり月額8万円)。
さらに、相手の財産を特定しやすくするための「情報開示命令」や、手続きを簡略化する「ワンストップ執行」などの制度も整備されます。一度養育費を放棄してしまった場合でも、こうした新しい制度を活用して、子どものための権利を守っていくことが期待されています。
改正法の適用時期に注意
法定養育費の制度は、原則として2026年4月1日以降に離婚した場合に適用されます。施行前に離婚している場合は直接適用されませんが、調停などで養育費を請求する権利自体は変わりません。
法律が変わって、養育費を受け取りやすい環境が少しずつ整ってきています。一人で悩まずに、まずは専門機関に相談してみてくださいね。
よくある質問
Q.離婚協議書に「今後一切の金銭的請求をしない(清算条項)」と書いてしまいました。養育費は請求できませんか?
Q.「養育費はいらない」と言ってから何年も経っています。過去の分もまとめて請求できますか?
Q.相手が「約束が違う」と怒って話し合いに応じてくれません。どうすればいいですか?
Q.生活保護を受けている場合でも、養育費を請求する必要がありますか?
Q.公正証書で「養育費は月額0円とする」と定めた場合でも変更できますか?
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※こちらでの解説は一般的な内容であり、個別のケースへの法的助言ではありません。具体的な判断に迷うときは、必ず専門家にご相談ください。