相手の収入がわからないときの養育費請求!調べ方と対処法

最終更新: 2026-07-30|養育費請求ナビ編集チーム|読了目安 約9
相手の収入がわからないときの養育費請求!調べ方と対処法のイメージ
相手の収入がわからない、少なく申告されている場合の対処法。自分でできる調べ方から、調停での開示請求、2026年改正民法の情報開示命令、自営業者の確定申告書の見方まで詳しく解説します。
こはる

「養育費を請求したいけれど、相手がいくら稼いでいるのか全くわからない…」「自営業だからと収入を少なく言われている気がする…」と不安に思っていませんか。相手の収入は養育費の金額を決める一番大切な基準です。私も最初は相手の収入がわからず途方に暮れましたが、実は調べる方法や裁判所の手続きがあるんです。諦めずに、一緒に適正な金額を計算するための準備をしていきましょうね。

まず、これだけは知ってください

  • 養育費の金額は「算定表」を使って双方の収入から決めるため、相手の正確な収入を把握することが不可欠です
  • 相手が収入を隠す場合でも、調停での開示要請や、2026年4月施行の「情報開示命令」を利用して収入を明らかにできます
  • 自営業者や役員が収入を少なく申告している場合は、確定申告書の「減価償却費」などを足し戻して実際の収入を計算し直します

1. なぜ相手の収入資料が必要なの?

養育費の金額は、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」を使って決めるのが一般的な実務です。この算定表は、縦軸が「支払う側(相手)の年収」、横軸が「受け取る側(あなた)の年収」となっており、交差する部分が適正な養育費の目安となります。

つまり、相手の収入がわからないと、そもそもいくら請求できるのかの基準が定まりません。相手が「お金がないから月1万円しか払えない」と言ってきても、それが本当なのか、それとも嘘をついて少なく支払おうとしているのかを判断するためには、客観的な収入資料がどうしても必要なのです。

また、話し合いがまとまらずに調停や審判になった場合でも、裁判所は双方の収入資料(源泉徴収票や確定申告書など)の提出を求めます。適正な養育費を受け取るためには、相手の収入を正確に把握することが第一歩となります。

相手の収入がわからないときの3ステップ(自分で集める→調停で開示を求める→情報開示命令)を示した図解
現在の適正な養育費相場を計算する
相手の想定年収を入力して、算定表に基づく適正額の目安を確認してみましょう

2. 自分でできる相手の収入の調べ方

相手が自発的に収入資料を見せてくれない場合、まずは自分でできる範囲で情報を集めることが大切です。ただし、源泉徴収票や課税証明書(所得証明書)などの公的な収入証明は、原則として本人しか取得できません。そのため、離婚前で同居している間に、これらの書類のコピーを取ったり、スマートフォンで写真を撮ったりして保存しておくのが最も確実な方法です。

すでに別居や離婚をしていて書類が手元にない場合は、相手の勤務先名や役職、会社の規模などをメモしておきましょう。また、相手のSNS(XやInstagramなど)の投稿も重要な手がかりになります。頻繁に旅行に行っていたり、高級車に乗っていたり、昇進を報告していたりする投稿は、相手に十分な収入があることの状況証拠として使える場合があります。

相手が会社を経営している場合や役員になっている場合は、法務局でその会社の「商業登記簿謄本」を取得することができます。誰でも数百円で取得でき、会社の資本金や役員就任の事実を確認できるため、収入を推測する材料の一つになります。

相手の収入・資産に関する情報収集チェックリスト

  • 源泉徴収票や確定申告書、給与明細のコピーや写真(離婚前なら必須)
  • 相手の現在の勤務先名、部署、役職、会社の住所
  • 相手のSNSアカウント(羽振りの良さがわかる投稿のスクリーンショット)
  • 相手が経営・役員をしている会社の商業登記簿謄本
  • 相手名義の銀行口座の支店名や、所有している不動産・車の情報
こはる

「何も証拠がない…」と焦らなくても大丈夫です。勤務先がわかるだけでも、後で説明する裁判所の手続きで大きな武器になりますよ。

3. 調停・審判で相手の収入を開示させる方法

自分での情報収集に限界がある場合や、相手が頑なに収入を隠す場合は、家庭裁判所の「養育費請求調停」を申し立てるのが効果的です。調停では、調停委員が間に入り、双方に収入資料の提出を強く促します。裁判所からの要請であれば、多くの人は観念して源泉徴収票などを提出します。

それでも相手が提出を拒否したり、嘘の資料を出している疑いがある場合は、調停から移行する「審判」の手続きの中で、「調査嘱託(ちょうさしょくたく)」という制度を利用できます。これは、裁判所が相手の勤務先や市区町村役場、金融機関などに対して、直接収入や財産に関する情報を照会してくれる強力な手続きです。

調査嘱託を利用するには、相手の勤務先名や口座のある銀行の支店名など、ある程度の情報が必要です。そのため、先ほど説明した「自分でできる調べ方」で集めた情報がここで活きてくるのです。

手続き内容強制力
調停での提出要請調停委員から相手に収入資料の提出を促す法的な強制力はないが、心理的プレッシャーは大きい
調査嘱託(審判等)裁判所が勤務先や役所などに直接情報を照会する照会先には回答義務があり、正確な情報が得られる
養育費請求調停の詳しい手順を見る
話し合いができない場合は、迷わず調停を利用しましょう

4. 2026年4月施行!強力な「情報開示命令」とは

相手が収入や財産を隠す問題に対処するため、2026年4月1日に施行された改正民法等により、新たに「情報開示命令」という制度が導入されました。これは、養育費や婚姻費用、財産分与などの審理において、裁判所が当事者に対して直接、収入や資産状況の情報を開示するよう命じることができる画期的な制度です。

これまでの調査嘱託は、相手の勤務先などがわかっている場合に「第三者」に照会するものでしたが、情報開示命令は「相手本人」に対して全財産や収入の開示を命じるものです。相手がこの命令に従わずに情報を開示しなかったり、嘘の情報を申告したりした場合には、10万円以下の過料(罰金のようなもの)が科されるという制裁も設けられました。

この制度により、「隠し通せば逃げ切れる」という相手の逃げ道が大きく塞がれました。相手が収入を明らかにしてくれない場合は、この新しい制度の利用も視野に入れて、強気に交渉を進めることができます。

情報開示命令は裁判所の手続きの中で使います

情報開示命令は、当事者同士の話し合いの段階で使えるものではなく、調停や審判といった裁判所の手続きの中で申し立てるものです。相手が情報を隠す場合は、早めに調停を申し立てることが解決への近道です。

5. 収入不明のまま進める場合の「賃金センサス」

相手がどうしても収入資料を提出せず、勤務先も不明で調査嘱託なども使えない場合、養育費の請求を諦めなければならないのでしょうか。結論から言うと、諦める必要はありません。実務上は「賃金センサス」という国の統計データを使って、相手の収入を推計して養育費を算定することが認められています。

賃金センサスとは、厚生労働省が毎年発表している、年齢や学歴、性別ごとの平均賃金の統計です。相手が健康で働く能力(潜在的稼働能力)があるにもかかわらず、わざと無職になっていたり、収入を隠して明らかにしない場合には、この賃金センサスの平均賃金(例えば、同年代・同学歴の男性の平均年収)を相手の収入とみなして算定表に当てはめます。

「本当はもっと稼いでいるはずなのに」と悔しい思いをするかもしれませんが、少なくとも「収入がわからないから養育費はゼロ」という最悪の事態は防ぐことができます。相手にとっても、資料を出さないと平均賃金で計算されてしまうため、実際の収入がそれより低い場合は、慌てて資料を出してくることもあります。

こはる

「働けるのに働かない」「収入を隠す」という不誠実な態度は、裁判所も許しません。統計データを使ってしっかり請求できるので安心してくださいね。

6. 自営業・役員の「少なく申告」を見破る方法

相手が自営業者(個人事業主)や会社役員の場合、「経費がたくさんかかっているから利益はない」「役員報酬は月10万円に設定している」などと言って、意図的に収入を少なく見せようとすることがよくあります。しかし、養育費の算定においては、確定申告書の数字をそのまま鵜呑みにする必要はありません。

自営業者の場合、確定申告書の「課税される所得金額」がベースになりますが、税金対策のために計上している「現実に財布からお金が出ていっていない経費」は、養育費の計算上は所得に「足し戻す」ことができます。代表的なものが「減価償却費」と「青色申告特別控除」です。これらを所得に足し戻すことで、養育費算定の基礎となる実際の収入は、申告書上の所得よりも高くなります。

また、相手が自分の会社の社長などで、役員報酬を不自然に低く設定し、会社の利益として内部留保しているような場合は、会社の利益の一部を個人の収入と同視して養育費を算定できるケースもあります。自営業者や役員の収入認定は複雑になりがちなので、確定申告書や決算書を入手したら、これらのポイントをしっかり確認しましょう。

確定申告書の項目養育費計算での扱い理由
課税される所得金額ベースとなる金額ここから必要な項目を足し戻す
減価償却費所得に足し戻す(プラスする)実際にはその年に現金が手元から出ていっていないため
青色申告特別控除所得に足し戻す(プラスする)税制上の優遇措置であり、実際の支出ではないため
私的な飲食代などの経費不自然なものは足し戻しを主張事業に無関係な経費は所得として扱うべきだから

自営業者の算定表の見方に注意

養育費算定表を使う際、自営業者の場合は「給与所得者」の枠ではなく、内側の「自営業者」の枠の数字を見ます。給与所得者とは経費の考え方が異なるため、見る枠を間違えないように注意してください。

よくある質問

Q.相手が「無職だから養育費は払えない」と言っています。どうすればいいですか?
A.相手が健康で働く能力があるのに働いていない場合、裁判所は「潜在的稼働能力がある」と判断し、賃金センサス(平均賃金の統計)や過去の収入を基準にして養育費を算定します。無職だからといって支払義務がなくなるわけではありません。
Q.相手の源泉徴収票を勝手に取得することはできますか?
A.いいえ、源泉徴収票や市区町村が発行する課税証明書は、原則として本人しか取得できません。相手の委任状を偽造して取得することは犯罪になるため絶対にやめましょう。調停や情報開示命令など、正当な手続きを利用してください。
Q.相手が再婚して、新しい配偶者の収入で生活しているようです。この場合どうなりますか?
A.養育費はあくまで「相手自身の収入」を基準に算定します。新しい配偶者の収入が直接相手の収入に加算されるわけではありません。ただし、相手が専業主夫などで無収入でも、配偶者の収入で生活できている場合は、相手に潜在的稼働能力があるとみなして算定される可能性があります。
Q.調停で相手が提出した給与明細が偽造されている気がします。
A.給与明細は会社が独自に発行するため、偽造や改ざんが疑われる場合は、公的な証明である「課税証明書(所得証明書)」の提出を求めるよう調停委員にお願いしましょう。課税証明書は役所が発行するため、偽造は非常に困難です。
Q.自営業の相手が「今年は赤字だから払えない」と言っています。
A.確定申告上は赤字でも、減価償却費や青色申告特別控除を足し戻すと黒字になるケースはよくあります。また、本当に赤字であっても、生活できている以上は何らかの収入源があるはずです。過去数年分の申告書を確認したり、賃金センサスでの算定を主張したりして対抗しましょう。

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