離婚時に養育費の取り決めをしていない場合の請求方法

「離婚を早く成立させたくて、養育費の話をしないまま別れてしまった」——実はとても多いケースです。取り決めがなくても、親の扶養義務は法律上消えていません。今からでも請求できます。
「取り決めをしなかった私が悪いのかな」って、自分を責めていませんか。私も同じことを考えていたので、その気持ち、よく分かります。でも調べてみたら、離婚のときに養育費を取り決めている母子家庭は半分もいないそうです。あなただけじゃありません。そして今は、取り決めがなくても請求できる仕組みがきちんとあります。一緒に順番に確認していきましょうね。
やり方は一つずつ、この記事で確認できます。焦らなくて大丈夫ですよ。
まず、これだけは知ってください
- 取り決めがなくても、今から請求できます。親の扶養義務は離婚後も消えません(民法766条・877条)
- 2026年4月からは、取り決めがなくても一定額を請求できる「法定養育費」制度が始まりました
- ただし過去の分は「請求した日」以降しか認められないのが実務。動き出した日がスタートラインになるため、1ヶ月でも早く動くほど受け取れる総額が増えます
解決までの目安
話し合いなら1〜2ヶ月/調停なら3〜8ヶ月
自分でやる場合の費用
0円〜数万円
自分でできる度
★★★☆☆(調停まで自分でできます)
※期間・費用は一般的な目安です。相手の対応や裁判所の混雑状況により変わります
ステップ1:まずは「いくら請求できるか」を数字にする
何よりも先に、あなたのケースの相場を知ることから始めます。金額の目安が分からないまま相手と話しても、「そんなに払えない」と言われて終わってしまうからです。
養育費の金額は、裁判所が公表している「養育費算定表」で決まるのが実務です。あなたと相手の年収、子どもの人数と年齢——この3つの要素だけで、月額の目安が機械的に出ます。調停や審判になっても、裁判官はこの算定表をベースに金額を決めます。つまり、算定表の金額はあなたの「交渉の武器」になります。
例えば、あなたの年収が200万円(給与)、相手の年収が450万円(給与)、子どもが5歳の1人なら、月額の目安は4〜6万円です。当サイトの相場計算ツールに入力すれば、30秒であなたのケースの金額が分かります。

私は最初、相場を知らないまま「いくらか払ってほしい」とだけ伝えて、うまくいきませんでした。「算定表だと月5万円です」と数字で言えるようになってから、話が具体的に進むようになったんです。
ステップ2:2026年4月からの「法定養育費」を知っておく
2026年4月1日に施行された改正民法で、「法定養育費」という新しい制度が始まりました。これは、離婚時に養育費の取り決めをしないまま別れた場合でも、法務省令で定める一定額(子ども1人あたり月額2万円)を、取り決めなしで請求できるという制度です。
この制度のポイントは「取り決めがない=請求できない」という状況をなくしたことです。法定養育費には先取特権(他の債権者より優先して回収できる権利)も認められており、支払われない場合は財産の差押えも視野に入ります。
ただし、法定養育費はあくまで「最低限のセーフティネット」です。算定表に基づく本来の相場(多くのケースで月4〜8万円)より低いことがほとんどなので、これで満足せず、きちんと取り決めをして相場どおりの金額を確保することをおすすめします。
| 法定養育費(2026年4月〜) | 取り決めた養育費 | |
|---|---|---|
| 金額 | 子1人あたり月2万円(法務省令) | 算定表ベースで多くは月4〜8万円 |
| 手続き | 取り決め不要・離婚成立で発生 | 協議・調停・審判で決定 |
| 強制執行 | 可能(先取特権あり) | 公正証書・調停調書があれば可能 |
| 位置づけ | 取り決めまでの応急措置 | 本来の適正額 |
「月2万円もらえるからいいや」で止まらないでください
法定養育費は取り決めをするまでの応急措置という位置づけです。算定表の相場と比べると差額が月数万円になることも多く、子どもが成人するまでの総額では数百万円の差になります。必ずステップ3以降の「正式な取り決め」まで進みましょう。
ステップ3:相手に請求の意思を伝える(ここが総額の起点になります)
相場が分かったら、相手に「養育費を払ってほしい」という意思を伝えます。実はこれが法律的にとても重要な一歩です。というのも、実務では養育費は「請求の意思を明確にした時点」以降の分しか認められないのが原則だからです。今日請求すれば今日から、3ヶ月後に請求すれば3ヶ月後からしかカウントされません。

ステップ3の実践:伝え方のコツと、そのまま使える文例
話し合いができる関係なら、LINEやメールでかまいません。「子どもの養育費について話したい。算定表だと月◯万円が目安になるので、支払いをお願いしたい」と、金額の根拠つきで伝えます。感情的な言葉は避け、事務的に、記録が残る手段で伝えるのがコツです。
文面に迷ったら、「責めずに事実から入る」「子どものためを軸にする」「相手が返信しやすい形で終える」の3原則を意識してみてください。詳しい文面の作り方や電話での話し方は、当サイトの「まずは穏やかに連絡してみる」ガイド→記事を読むで、NG例とOK例つきで解説しています。
話し合いが難しい関係なら、内容証明郵便で請求します。内容証明は「いつ・誰が・何を請求したか」を郵便局が公的に証明してくれる制度で、費用は数千円、自分で出せます。「請求した日」の動かぬ証拠になるため、過去分の起点を確定させる意味でも有効です。
請求の連絡に入れるべき内容
- 養育費の支払いを求めること(明確に)
- 希望する月額と、その根拠(算定表の相場)
- 支払い開始時期と振込先
- 回答の期限(2週間程度が目安)
- 取り決めを書面(公正証書)にしたいこと
「連絡するのが怖い」という方は、無理に自分で送らなくて大丈夫です。弁護士名義で内容証明を送ってもらう方法もありますし、最初から調停を申し立ててもかまいません。調停なら相手と直接顔を合わせずに進められますよ。
ステップ4:合意できたら、必ず「強制執行認諾文言付き公正証書」にする
相手が「分かった、払うよ」と言ってくれたら、そこで安心して口約束のままにしないでください。養育費の支払いは10年、15年と続きます。統計上、口約束だけの養育費は途中で支払われなくなるケースが非常に多いのが現実です。
合意内容は「強制執行認諾文言付き公正証書」にします。これは公証役場で公証人に作ってもらう公文書で、「支払いを怠ったときは直ちに強制執行に服する」という一文(強制執行認諾文言)を入れることで、将来もし未払いになっても、裁判を経ずにいきなり給与や預貯金の差押えができるようになります。
作成手数料は取り決める金額により数万円程度(多くのケースで2〜5万円)。夫婦で公証役場に行く必要がありますが、行けない場合は代理人でも作成できます。この数万円で「15年分の支払いの保険」が手に入ると考えると、決して高くありません。
| 形式 | 費用 | 未払い時にできること |
|---|---|---|
| 口約束 | 0円 | ×証拠がなく、調停からやり直し |
| 念書・合意書(私文書) | 0円 | △証拠にはなるが、差押えには調停・裁判が必要 |
| 強制執行認諾文言付き公正証書 | 2〜5万円程度 | ◎裁判なしで直ちに給与・口座の差押えが可能 |
| 調停調書(調停で合意) | 数千円 | ◎同上(裁判所の書面なので最も強力) |
「認諾文言なし」の公正証書では差押えできません
公正証書なら何でもよいわけではありません。「強制執行認諾文言」が入っていない公正証書は、未払い時にそのまま差押えに進めず、結局調停や裁判が必要になります。公証人との打ち合わせで必ず「強制執行認諾文言を入れてください」と伝えてください。
ステップ5:相手が応じないなら、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てる
「話し合いに応じない」「連絡を無視される」「金額で折り合わない」——そんなときは、家庭裁判所の養育費請求調停に進みます。「裁判所」と聞くと身構えるかもしれませんが、調停は裁判とは違い、調停委員(男女1名ずつ)を間に挟んだ話し合いの場です。弁護士なしで申し立てる方も多くいます。
申立てに必要な費用は、収入印紙1,200円(子ども1人につき)+連絡用の郵便切手(1,000円前後)だけ。申立先は原則として相手の住所地を管轄する家庭裁判所です。申立書は裁判所のウェブサイトからダウンロードでき、記載例も公開されています。
調停では、待合室も入退室も相手と別々になるよう配慮されるため、顔を合わせずに進められます。DVなどの事情があれば、事前に裁判所へ伝えることでさらに配慮を受けられます。月1回ペースで開かれ、多くのケースは2〜4回(3〜6ヶ月程度)で結論に至ります。
そして重要なのは、調停が不成立になっても終わりではないことです。調停不成立の場合は自動的に「審判」に移行し、裁判官が算定表に基づいて金額を決定してくれます。つまり、調停を申し立てた時点で「金額が決まらないまま終わる」ことはほぼなくなります。
調停申立てに必要なもの
- 申立書(裁判所サイトからダウンロード・記載例あり)
- 子どもの戸籍謄本(全部事項証明書)
- あなたの収入資料(源泉徴収票・給与明細・課税証明書など)
- 収入印紙1,200円(子1人あたり)と連絡用切手
- (あれば)相手の収入が分かる資料・これまでのやり取りの記録
調停で決まった内容は「調停調書」になります。これは公正証書と同じ——実はそれ以上に強力な書面で、未払いになったら差押えができますし、家庭裁判所から支払いを促してもらう「履行勧告」も無料で使えるようになります。
ステップ6:それでも難しいときは、専門家の力を借りる
ここまでのステップは、すべて自分の力で進められるように書きました。ただ、「相手と一切関わりたくない」「仕事と育児で裁判所に行く時間がない」「相手が調停にも出てこない」という場合は、弁護士に依頼するという選択肢があります。
弁護士に依頼すると、相手との交渉・内容証明の送付・調停の代理・公正証書化まで一括して任せられます。費用面のハードルについては、養育費案件では着手金0円・完全成功報酬制(回収できた分からの後払い)の事務所が増えており、手元にお金がなくても依頼できるケースがあります。また、収入が一定以下なら法テラスの民事法律扶助(無料相談・費用立替)も使えます。
「いきなり弁護士はちょっと」という方は、市区町村の無料法律相談や、法テラスの無料相談(収入等の条件あり・同一問題につき3回まで)で、まず見通しだけ聞いてみるのもおすすめです。あなたのお住まいの地域の窓口は、下の都道府県別ページにまとめています。
よくある質問
Q.離婚してから5年経っています。今からでも請求できますか?
Q.相手の年収が分かりません。相場の計算はできますか?
Q.離婚時に「養育費はいらない」と言ってしまいました。もう請求できませんか?
Q.相手が再婚して新しい家庭があります。それでも請求していい?
Q.調停にお金も時間もかけられません。もっと簡単な方法はありませんか?
このケースのポイント
取り決めなしのケースは「請求した日」がすべての起点になります。相場の確認→内容証明→調停という流れを、弁護士に依頼すれば最短ルートで進められます。
このケースにおすすめの事務所
公正証書がないケースの対応実績が豊富な事務所がおすすめです。
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養育費のことは、なかなか人に相談しづらいもの。あなたの一言のシェアが、誰かの一歩につながるかもしれません。
※こちらでの解説は一般的な内容であり、個別のケースへの法的助言ではありません。具体的な判断に迷うときは、必ず専門家にご相談ください。
